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ファームホロの
おいしいアスパラガス

新ひだか町の三石蓬栄に位置する
ファームホロのビニールハウスの中で
すくすくと育つアスパラガスに出会いました。
皮も柔らかくみずみずしいアスパラガスは、
町を代表する特産品として、
少しずつ全国に知られ始めています。

季節は8月。ビニールハウスで栽培されるアスパラガスの収穫ももう終盤です。
「収穫時期は3月下旬から9月下旬で、冬の間は休眠期間。ゆっくり眠るからこそ、太くて味の濃いアスパラガスが育つんですよ」
そう話すのは、新ひだか町にある農業生産法人ファームホロの“アスパラリーダー”こと木島誠二さん。露地栽培のアスパラガスは5月末から7月初旬に収穫時期を迎えてシーズンを終えますが、ハウス促成栽培の場合は3月から5月にかけて収穫した後、7月から8月にかけてまた夏芽が生えるため、一年に2回収穫できるのだそうです。「日高地方は農地が狭いから、ハウス栽培をすることで収量を増やしているんです」と、額の汗を拭いながら話してくれました。
馬堆肥を使っているのも、馬の産地ならでは。日高地方だからこそ育てられる、特別なアスパラガスです。

アスパラガスは多年生植物で、ひとつの株から10〜20もの若茎が生え、私たちはそれを食べています。日本に渡ってきた当初、繁茂した夏の親茎は観賞用とされていたそう。ふわふわとした繊細な葉が広がり、とても華やか。
平成18年に入社した木島さんの地元は、旧三石町(合併して新ひだか町に)。町を離れて病院の事務として働いていましたが、Uターンして三石町役場に勤め、その後同級生だった副社長に誘われてファームホロに入社しました。農業初心者から、いまやアスパラリーダーに。

ファームホロの歴史は、新ひだか町に拠点を置く幌村建設が、新領域事業として農業に目をつけたところから始まりました。
2005年7月に営農集団として営農を開始し、100坪の大きさのビニールハウスを3棟設置。最初に始めたのが、花卉栽培です。その後、旧三石町役場農政課からアスパラガスの栽培を勧められ、翌年の2006年に70坪の大きさのビニールハウスを30棟追加。2009年には法人化し、農業生産法人の認可も取得しました。現在、アスパラガス栽培用のビニールハウスは68棟にまで増えています。
「ハウスは特に冬が心配です。日高地方はそれほど雪深いエリアではありませんが、それでも雪をまめに落とさないと潰れてしまいます。上の雪はもちろん、下に溜まった雪を取り除いたり、強風のときはビニールを補修したりと、作物が相手なので気が抜けません」

酪農学園大学との連携で開発した、オリジナルの品種『紫色舞(むらさきしきぶ)』。柔らかくてうねりがちな紫アスパラですが、まっすぐ生えて育てやすい品種です。鮮やかな色と安定した収量も特徴。
ホワイトアスパラは、光に当たると色がついてしまいます。収穫後でも色づく可能性があるため、念には念を入れて暗い場所で出荷作業。

細いアスパラガスばかりを残していると、生育を学習して細いものばかり生えてきてしまうため、あえて太いアスパラガスを数本残しておくことで、翌年に太いアスパラガスをたくさん生やすのだといいます。
「ファーム ホロのグリーンアスパラには、ウェルカムという品種を採用しています。これは太くなりやすいのですが病気もつきやすく、柔らかくて倒れやすい。栽培するには大変な品種です。しかし穂先の締まりも良く、みずみずしく、多くのお客さまに喜んでいただいています」
ファームホロで直接買うこともできますが、人気ですぐ売り切れてしまうため、せっかく足を伸ばしても購入できないことも多いそう。事前問い合わせは必須です。
しかし、もし買えなくても、町内においしく食べられるお店があるのです。

三石の食材を中心に取り扱う『くまのフライパン』は、海や山などの自然に囲まれた、地元で親しまれるレストラン。ここに来れば、日高地方の旬を感じることができます。
ファームホロのアスパラガスは、名物のポークチャップの付け合わせに。サブ的な役割ではなく、見た目にもしっかりとその存在感を保っています。
「春採りのアスパラガスは、特に糖度が高い。だから、シンプルな料理が向いていると思うんです。僕は30秒茹でてサッとあげています。茹で上げたあとに余熱で火を通すと無駄な糖分が外に出ず、中もしっとりした状態を保つことができます」
ポークチャップの上に乗っている1本のアスパラガスは、2Lサイズとかなり太いもの。歯応えもしっかり感じられる、主役級のおいしさです。

ガツンと食べ応えのあるポークチャップに、アスパラガスのみずみずしい爽やかさがマッチ。シェフの森恵祐さんは「ファームホロのアスパラガスは、味が濃くて皮が薄いんです。仕入れ後に下の部分を少し切って味見をするのですが、本来であれば皮が口に残る部分であるにもかかわらず、残らない。それがすごいなと思います」と話してくれました。
また、春採りのアスパラガスの甘みを生かした春限定の『アスパラプリン』という珍しい商品も、1年ほど試作をして完成させたそうです。ファームホロの従業員のみなさんも、自分たちが生産に関わったアスパラガスを使ったスイーツに舌鼓。

厚切り健酵豚ポークチャップ(ロース)1980円。酵素を飲みながら育った三石地区の『健酵豚』を使用。実はこの健酵豚、ファームホロのアスパラガスも食べています。脂身がスッキリしていて、いつまでも口の中で味わっていたいおいしさ。
コース料理や宴会料理などのオーダーがあったときに登場する、アスパラのグリル。半熟卵やほかの野菜とも合わせて、旬を楽しみます。
くまのフライパンのシェフ、森恵祐さんも旧三石町の出身。お店を始めるときは「料理のすべてを三石産の食材で」と考えていました。季節によっては難しいこともあるものの、ほとんどを実現させています。

町内だけでなく、ふるさと納税の返礼品のほか、東京の有名ホテルや飲食店からもラブコールを受けるなど、
日本全国に広まりつつある新ひだか町のアスパラガス。
ぜひこの町に訪れて、味わってみてください。

Edit
Hi-MAG
Text
Satoko Nakano
Photo
Maki Moritaka
(Information)
農業生産法人
株式会社ファーム ホロ
北海道日高郡新ひだか町三石蓬栄131
0146-33-2577
http://www.horo.co.jp/farm