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「御徒町と三角」が選ぶ “道産誌賞”

2024.12.17

Hi-MAG1周年を記念して創設された「道産詩賞」の応募がスタートしました。こちらは北海道をテーマとした投稿型の詩のコンテスト。そこで今回は審査員を担当するHi-MAGプロデューサーで詩人の御徒町凧と北海道在住の詩人三角みづ紀さんにお話を伺いました。


HM:道産詩賞の審査員は、当初Kさん(御徒町)だけでいいかなって思ってたんだよね。ハイマグとして初めての試みだし、まずは小さくやってみようと。でも、Kさんから三角さんも審査員に加えたいって相談があって。それはなんでだったの?

御徒町:三角さんを誘おうと思い立ったのって、谷川俊太郎さんが亡くなったことを知った日なんだよね。実は、俊太郎さんの訃報を報せてくれたのが三角さんで、その日は、ちょうど道産詩賞の公募開始直前。そんなこともあって、あらためて賞のことをいろいろと考えていて…

詩の選考は最終的には独断と偏見になってしまうと思うから、俺一人よりも、詩に関して信用できる人が、もう一人いるといいなって。その方が俺も安心だし、より自由に選ぶことができる。三角さんは北海道在住だし、道内で一緒に朗読会もやったことがあって、別の賞での審査員経験もある。俺よりも純粋に詩というジャンルの中で活躍している人だから、三角さんを巻き込むことで、間口も広がるなって思ったし、まさにうってつけな人だと思ったんだよね。

HM:それで急遽、三角さんにお声がけをして快諾してもらえました。三角さん、ありがとうございます。オファーがあったとき、どう思いました?

三角:嬉しいなと思いました。私は北海道新聞で、道内の同人誌の詩評のようなことをやっていて、出版社からでている詩集を読むのとは違う面白さってあるなって。なんだろう、ダークホースみたいな?

HM:意外性があるってことですか?

三角:そうそう。自分だと絶対書けないような詩にたくさん出会えて、本当に面白いんです。道産誌賞でも、そんな詩に出会えそうだなって。あと、SNSで募集するということにはびっくりしました。募集期間中に他の人の応募作品が読める。それって、けっこうスリリングですよね。

HM:今回、賞という名前をつけているけれど、目的は一番を決めることじゃないんです。詩でたくさんの人とコミュニケーションがしたい。たくさんの人とSNS上で詩を読み交わして、楽しめたらいいなって。それは、Kさんが北海道で、詩を通じて交流をしている姿を見ていたからでもあるんだけど。

御徒町:詩のようなもの書いたから読んでみてって送られてくるね。これって詩ですか?って。

HM:あ、そこ気になるかも。「詩」ってそもそも何?ってこと。

御徒町:極端なことを言うと、書いた人が詩だと思えばそれは詩なんだよね。

HM:三角さんにとっては?

三角:御徒町さんと一緒ですね。自分が詩だと思ったら、それは詩だと言えると思う。オンラインで詩の教室をやっていても、同じような質問があって。日記と詩の違いは何?とか。ただ、初心者の方にはちょっと伝わりにくくて、答え方はちょっと迷います…。

御徒町:詩を書いて読み返した時に、どう感じるかというのもすごく大事なんだよね。書いている時に感じていたことと、読む時に感じることって違うから。

HM:書いた時の自分に、もう一度向き合う感じ?

御徒町:そう。書いて、読んで、反芻する。自分の感受性と向き合う、ある種の問答みたいなものでもあるんだよ。詩ってさ、それで食っていけないじゃん。

HM:マーケットはたしかに小さそう。

御徒町:うん。じゃあなんで書くのって言ったら、書きたいから書くでしかないのよ。経済的なこととは切り離された、純粋な自分との問答。だから、みんな詩を書いた方がいいって俺は思っているの。

HM:詩って、誰でも書けるしね。

御徒町:俺もよくわからないなりにずっと書いてきて、昨日よりいい詩が書けたなとか、ずっと書けなかったことが言葉にできたなとか。詩のおかげで出会えた人もいるし。詩のおかげでいろいろなことがひらけていったんだよね。自己と対話するっていう意味で、詩ほどいいものはないと思う。

HM:じゃあ、詩が自己との対話だとしたら、それをどう評価するの?内面の現れを、客観的に評価するのって難しくない?

御徒町:それはもう、読み手の主観でしかない。

三角:私もそう思います。ただもし、私がいいなと感じたことを、他の人も同じように感じたなら…

HM:主観を越えた普遍的な魅力がある、ということですね。つまり、Kさんと三角さんの主観が重なった作品が、道産詩賞に選ばれると。

|嘘も愛した詩になれ

三角:さっきも話した日記と詩の違いについて思ったんですけど。例えばこの詩。(机に置かれたKの詩を取り出す)「その間もずっと谷川さんは死んでいた」という一行って、やっぱり日記にはない描写ですよね。

HM:たしかに。

三角:これって“違和感”だと思うんです。ちゃんと良い違和感が詩の中にはあると思うんです。でもどうやったらその違和感を作れるんですかと聞かれると、答えにくくて、いっぱい書くしかないのかな。

御徒町:さっき自分の詩を例に出してくれて分かりやすくなったんだけど、これって本当に思ったことなんだよね。レトリックじゃなくて、イメージとか観念としてその通り思ったことを並べて書いただけなの。

HM: 感じたままに書いたってこと?

御徒町:うん。リアリティってやっぱりすごい大事。俺はこの詩を書きながら、絶望もしてるわけ。辟易してるというか。谷川さんの死は自分の人生においてかなりインパクトある出来事なのに、それをこんなふうにしか捉えられないっていう感覚がある。誰かが死んで詩を書いたりするのはよく見るのに。だから俺は今の自分が俊太郎さんの死に対してできるだけ正直であろうって思ったの。それに尽きる。

HM:それが例えば日記のようなものになったとしても?

御徒町:そうなったとしても、それは俺の俊太郎さんの死との関係だから、それを受け入れるしかなく。 そこになんか技巧的な、もっとこうした方が詩としてシャープに見えるとか、詩らしくみんなに受け入れられるようにしようとすると、俊太郎さんの死がどんどん遠ざかっていっちゃうんだよね、感覚から。

HM:そうしたら道産詩賞に応募して欲しい作品って、嘘なくリアルな自分と向き合うってことかな。なんか上手く書こうとしないで。

御徒町:や、嘘も愛さなきゃならない。カッコつけようっていう気持ちを認めてあげることも大事。肉体を持って生きている以上、嘘なく正直だけで生きられる人なんていないから。

HM:嘘も愛す、か。背伸びしようとするのもある意味リアルな自分ってことだね。そうやって自分と向き合った詩ってやっぱりその人らしさ出るものなの?

三角:出ると思いますよ。

御徒町:むしろ、人柄しか出ない。

三角:詩からその人らしさを感じられますよね。

御徒町:道産詩賞ではその人らしさや、オリジナルであるって結構選定基準になるかもしれない。その人にとってのオリジナル、その人と言葉の間で納得するまで向き合う。それを手放さなければ良いのかな。

| 北海道の匂いが感じられるもの

HM:北海道っていうテーマはどう?書きやすいのかな。三角さんは札幌に住んでいて、北海道にまつわる詩もあったりしますよね。

三角:もちろん、あります。北海道というテーマは間口も広いので多分書きやすいんじゃないかな。雪とか白樺とか。食べ物もあるし。

HM:そこに何を取り上げるかっていうのも結構楽しみですよね。

三角:ちなみに日高の消火栓って何色ですか?

HM:消火栓って、いわゆる消防車が来て水を吸い上げるあの消火栓ですか。え、赤じゃないの。

三角:札幌は黄色なんですよ。そういう細かいところで北海道を感じるものとか面白そう。

HM:いわゆるパブリックイメージではない北海道が感じられるものとか。

三角:なんか私は結構そういうのに惹かれてしまう気がする。特有の風景を感じさせたり、土の匂いを感じさせるような、そこにしか存在しないもの。

HM:ハイマグは日高のウェブマガジンとして活動してるから、道産詩賞も最初は日高をテーマにして昆布部門と馬部門で募集しようとしたんだよね。

御徒町:日高っていわゆるわかりやすい観光地とかあまりなくて。人と触れ合っていくと魅力が見つかって詩が生まれてくるんだけど。

HM:日高を訪れたことがない人にとっては、昆布と馬だけだと限られてしまいそうだから北海道に変えたんだよね。

三角:昆布の詩!そういうのも楽しみですね。北海道じゃない場所に住んでいても、身近に北海道の物っていっぱいあるから、そういうものから詩を書いて応募してもらえるといいな。

HM:ちなみに三角さんは日高訪れたことあります。

三角:そう、まだ行ったことないんです。道産詩賞の審査する前には行っておきたいと思っています。

御徒町:来る時、言ってよ、案内するから。

三角:ありがとうございます!連絡します。


|道産詩賞の応募について

 ・応募方法:Xに「#道産詩」をつけ投稿又は「contact@hi-mag.jp」までメールをお送りください。
 ・応募期間:〜2025年1月31日(金)
 ・その他:賞や応募規定の詳細はこちらをご確認ください。