「3D プリント建築」ができるまで
前回記事を読んでいない方はコチラから→こんな田舎に3Dプリント建築が!?後編|日高エリアのウェブマガジン (hi-mag.jp)
今回は3Dプリント建築がどの様にして作られていったのか、現場目線でお話ししていきます。
とは言っても専門的過ぎると建設業界以外の方には難しいと思いますので、簡単な説明を心がけます。
一連の流れとしては、土間コンクリートの基礎→防寒養生仮囲い→ロボットアーム設置→3D壁プリント→鉄筋挿入→生コン打設→断熱材充填→屋根設置→ドア・窓設置→内装仕上げ→完了といった流れです。
実際の現場の様子を撮影して作った映像。ロボットアームがどの様に動きモルタル材が積層プリントされていくのかが理解できる思います。
工事の時期は真冬の2月。周辺の木々が凍り付き、息をするたび肺にピリピリとした空気が突き刺さる極寒の季節。
基礎となる土間コンクリートが完成し、ロボットアームが十分に稼働できる広さと高さのある仮囲いを設置(雪や風、温度変化の影響を受けないようにする為)。ブルーシートで覆われている影響で、この中にいる間は見えるもの全てが青くなる異空間。
ロボットアームをセットしプリントを開始する位置やノズルの角度などを調整、気温を考慮しモルタル材の水分量と硬化遅延材を入念に調整します。ここがしっかり出来ていないとプリント開始直後、瞬く間に失敗するので重要な作業です。
プリントに使用されるコンクリート(モルタル)は硬化が早く、次の層が上に来る頃には崩れない程度の硬さになり、どんどん硬化しながら積層されていく上層部を支えます。順調に進むと一日で壁が2枚プリント出来るので、1棟の壁をプリントするには最短で3日となります。
今回、積層された壁はご覧の通り2層構造になっていて、外壁側は鉄筋とコンクリート、内壁側は断熱材を充填する構造となっています。つまり鉄筋コンクリート造という事になります。
↑の写真を見ると外側の層にコンクリートが充填されている事が分かると思います。中間の部分はプリントした壁の強度を上げるためのブリッジですが、ここが熱橋(ヒートブリッジ)となってしまい外気温がここから室内に伝わってしまうので、この部分に関しては今後の重要な課題と言えます。何故この様な形状になるのか、というとロボットアームでのプリントは原則「一筆書き」となっていて、材料を出したり止めたり出来ないんです(止めると材料がホースの中で固まってしまうため)。
プリントが完成しキレイに積層された壁面。忘れてはいけないのがコレが-20℃の極寒の中、寒さとプレッシャーに耐えながら苦労して作られた物だという事。
こちらは屋根の枠をプリントし、鉄筋を組みコンクリートを打設しているところ。車で運搬出来ないサイズなので現場での製作となりました。
屋根だけで3tを超えるので大型のクレーンで吊り上げて設置します。
事前に壁に仕込んでいたアンカーボルトと接続し固定。凹み箇所をモルタルで埋めて屋根の表面を防水処理します。
卵形の屋根は一度でのプリントは難しく、複数のパーツに分けて作成し組立てました。
天井はウレタンの断熱材を吹付け、軽量天井を組み石膏ボードを張って塗装仕上げ。
床はタイルを張り、外壁面は素地のままだとモルタルが水分を若干吸い込むので塗装仕上げとしました。
こちらは外構に使うプリント製の塀、運搬可能なサイズですので現場でプリントする必要がなく、品質の安定感を考慮して、アイザワ高圧コンクリート株式会社鵡川工場にて製作。
こちらも結構な重量物になるので大型クレーンにて設置していきます。
様々なテクスチャーや形で作れる外構の塀。ご自宅の塀にいかがでしょうか。きっと二度見されるはず。「絶対に3Dプリンター製の塀が欲しい!」という情熱のある方はご連絡下さい。色んなテクスチャーや形状で作れます。
株式会社 伊藤組
〒056-0003
北海道日高郡新ひだか町静内旭町1-2-1
TEL:0146-42-2760
FAX:0146-42-3343
全ての作業が完了した外観。夜間は3Dの凹凸が照明によって よりハッキリと浮かび上がります。こちらはグランピングの施設となっていて、東屋のアウトドアリビングで贅沢なBBQを楽しみながら、または薪風呂に浸かり、お酒を嗜みながら日高の大自然と大空の下で最新技術である3Dプリント建築を鑑賞するのも、なかなか乙です。 (星が驚くほどキレイ) そんな3Dプリントハウスに泊まってみたい方はコチラから→https://www.dimaccio-glamping.jp/
Di-Maccio Glamping Village ディマシオ グランピングヴィレッジ
〒059-2343
北海道新冠郡新冠町字太陽204番地の5
TEL:0146-45-3312
FAX:0146-45-3313
新冠町 太陽の森 ディマシオ美術館の敷地内にあり、3Dプリント以外にも数多くのアート作品や「世界最大の油彩画」を楽しむ事ができますので、是非一度足を運んでみる事をおススメします。田舎ですが「非日常」過ぎてきっと驚きを隠せないはずです。
Thank you