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日高を家族で旅すると-後半-

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初めての北海道旅行。旅の始めに、レンタカー屋で北海道全域のガイドブックを見た時、日高地方だけ情報がスカスカだったことに衝撃を受けた。こんなことから(今回はグランピングをメインとした旅だったが)「日高って、どんなところだろう」という興味が湧いた我々は、ディマシオ美術館の谷本さんが予約してくれた乗馬クラブへ向かい、さらに日高をウロウロした。

サラブレッドに道草を食われる

競走馬の名産地、新冠では、引退した名馬で乗馬体験をさせてもらえる「にいかっぷホロシリ乗馬クラブ」がある。
娘と私が体験した場外乗馬では、乗馬クラブのお姉さんの先導で雄大な景色を眺めながら、野道を散策することができた。娘はサラブレッドを上手く乗りこなしていたが、私は文字どおり道草を食われまくってなかなか先に進めなかった。「馬は人を”みる”」という。いつも叱ってばかりの娘は立派に思え、乗馬クラブで指導してくれたお姉さんがなおさら格好よく見えた。私は…自分を見つめ直した。
(娘はこの旅で楽しかったことランキングTOP3にここでの乗馬を挙げていた)


話すほど知りたくなるマスター

山小屋のような佇まいのカフェ「syzygy cafe」。
店に入ると、年季の入った灯油ストーブが身体の芯をポカポカに温めてくれる。壁にはアコースティックギターがずらりと並んでいた。中古ギターをご自身で修理するのが楽しくて気がついたら集まっていたとのことだ。(ちなみに弾き放題らしい。)さらにカウンターの片隅に目を向けると、8ミリカメラやマニアックな書籍が意味深げに置かれていたので尋ねてみると、聞けば聞くほど興味深い話が出てきて、店内の様々なモノたちがマスターの相棒に見えた。
美味しいスコーンとコーヒーだけでなく、お話を聞きに再訪したいと思った。

このマスターは「Radioしずない」という静内発のラジオ番組をお持ちで、地元の情報の発信もしている。

アイヌのデザインと未知の町

新千歳空港へ向かう途中「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」へ立ち寄った。
ここはアイヌ民族の衣服が多く展示されており、自然の素材から生み出されるアイヌのデザインの美しさを間近に見ることができる。
隣接されている「沙流川歴史館」では、半世紀以上前に民間団体によって建設されたUFO基地ハヨピラ自然公園跡の資料があったし、平取を車で走っていると謎のオブジェがどーんと置いてある家が所々にあった。それはトロイの木馬のような巨大な木像や、大きな玉のようなものだったりした。一体なんだろう? 平取町のカントリーサインである可愛らしい“すずらん”との差も相まって、未知の空間に入り込んだ気持ちになった。

デザイン雑誌に掲載されるような博物館の内装や建築は、展示物の魅力を引き立てていた。

日高ってどんなところだろう

ここまで書いてきた場所はウロウロしたうちの一部だが、日高という土地と人と触れ合う度になんとも言えない豊かな個性を感じた。そんな日高がもっと知りたくて、出会う人一人ひとりに声をかけてみたくなるような、他の旅先では味わったことのない感覚だった。
なるほど、これはガイドブックに載るような楽しみとはまた別格なのかもしれない。
私しか知らない特別な北海道を知ったような、そんな優越感。
空港へ向かう車中、早くも次の日高行きの予定を考えているのだった。

(おわり)