Hi-MAG北海道・日高の
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ちいさな町の、ちいさな学生団体のおはなし。

はじめに

皆さん、はじめまして。大空優太と申します。

浦河町出身の22歳。2020年に浦河高校を卒業後、栃木県にある宇都宮大学共同教育学部に進学。小・中・特別支援学校の3つの免許を取得しましたが、4月からは東京の民間企業に就職し、社会人生活をスタートさせます。

そんな私ですが、高校生時代にとある学生団体を立ち上げました。浦河町を離れた現在も、その団体と共に歩みを進めています。

これから綴るのは、その団体の5年間に及ぶ足跡のおはなし。

そもそもこの足跡は何なのか。これからどこに向かい、辿っていった先にはどんな景色があるのか。まずは、はじめの一歩から。ここHi-MAGをお借りし、高校生という有限で、かけがえのない時間の中で故郷を想い、行動を起こし続けている団体の過去と今をお届けしていきます。


プロローグ

浦河町にある上山牧場さん

―丘と海のまきば―浦河町は日高東部に位置する人口1万人ほどの町です。町立の小学校が4校、中学校が3校あり、高校はお隣の様似町にあった様似高校と平成24年に合併。北海道浦河高等学校は、日高では唯一の総合学科の学校として、また、町にたった1つの高校として、その門戸を開いています。

この浦河高校では、総合的な学習の時間を用いた探求学習が盛んであり、町内外問わず、様々な場所で高校生たちが課題を持ち、その課題を解決するための方法を模索、実行する地域密着型の教育を展開しています。

2019年12月。そんな浦河町で、1つの学生団体が始動しました。その名は「浦高生ふるさと応援隊」。文字通り、高校生”だけ“で構成される団体です。

高校生だけと聞くと、なんだか不思議な感じがします。でも、本当に高校生だけなのです。もちろん、責任の所在をはっきりとするためにも、活動を支えてくれる大人は居ます。しかし、活動の主体は浦河高等学校に在籍する有志の高校生だけ。学外で活動するこの団体は、部活やサークルではなく、故に顧問の先生も存在しません。高校生たちが自分たちで立ち上げた、そんな団体が5年も続いています。


冬の浦河高校

始まりは、学内での探求学習からでした。探求学習といえど、0から形にしていくわけではありません。ある程度与えられたテーマから課題を考える、いわば0.5や1からスタートするのが探求学習です。これにちいさな違和感を覚えたことが、一番最初の灯。

学内にある学習はレールが予め用意されていることがほとんどです。たとえ敷かれていなかったとしても敷き方は既にあるもの、またはレールを敷くプロフェッショナルが側に居ることが当たり前のものでした。生徒たちは、その既にできあがっているレールを上手く乗りこなしていくのです。この、「上手くレールに乗るチカラ」はこれからの予測不可能な人生を生きていく上でも必要不可欠なことであることは確かです。

けれど、こうも考えられます。「0からレールを敷くチカラは、いつ、どこで、どうやって身に付ければいいのだろう?」。これからの人生、全ての状況でレールが用意されているとは限りません。特に自身の中で芽生えた「やってみたい」という高揚を実際に”自分の力”で形にしていく過程は、学校内の学びで得るには限界がある、と。でも、学校外を探してもそんな場所はなかった。方法論を考えるというよりも、自分の中にある小さな「やってみたい」の種を、実際に0から自分たちで発芽させてみるという「経験」を得られる場所、積み上げられる場所があるとより素敵だなと思ったのです。

団体を立ち上げたのは、当時私と一緒に探求学習をしていた仲間たちです。私たちの探求学習はそれはそれは中途半端な形で着地をし、あくまでも学内での学習として成立していました。このとき、自分たちの探求学習での不完全燃焼感を「どうにかできないか」という想いが芽生えたのです。先ほどの言葉でいうと、まだまだ「やってみたい」という想い。これが、二つ目の灯。

ただ、高校生という有限の時間の中でそれは当初「どうにもできないもの」でした。当時の私たちには、0から何かをやるということは全くの未知であり、始める方法すらもわからないものでした。

そんな時、浦河町出身の大学生の方が、浦河町でUターンイベントを開催するとの情報がたまたま入ってきました。タイトルは「浦河に何もないなんて嘘だ」。このイベントは当初、小学生を対象に行われるはずのものでした。しかし、イベントの話を耳にした私は、無性にワクワクしたのです。「なんか面白そう」。気づいたときには主催者に連絡をしており、私はそのイベントへと飛び込んでいきました。いま振り返ると、此処が全てのターニングポイントだったのだと思います。飛び込んだ先に待っていたのは、0からレールを敷いていった大学生のお兄さんお姉さんたち。そんな人たちからの「何かやりたいことがあるのならやってみようよ、私たちが手伝うからさ」という言葉。何かを踏み出すには十分すぎるきっかけ、十分すぎる後押し。これが三つ目の大きな灯でした。

いままでの活動の蹄跡

こうして立ち上がった団体は、当時の課題研究仲間である3年生5名、半強制的に巻き込んだ2年生4名の合計9名でその舵を切りました。団体名は「浦高生ふるさと応援隊」(通称「うらふる隊」)。

  • 高校生目線から町を取り巻く様々な分野にアプローチ(応援)していきたい
  • 学校外で自分たちでレールを敷いていける場所にしていきたい
  • 同年代の人たちにとっての「やってみたい」を形にするロールモデルのような場所にしていきたい

という願いが込められたこの団体は、きっかけをくれた大学生を始め、多くの「大人」に助けてもらいながら今もなお、走り続けています。

立ち上げ初年度のイベントは探求学習での不完全燃焼感を吹き飛ばす、浦河小学校への「心」の出前授業。ありがたいことに授業の時間を丸々2時間お借りし、5・6年生を対象に「素敵な”私“に会いに行こう」というタイトルでのプロジェクトとなりました。このプロジェクトはNHKで特別番組にしていただくなど、団体としての大きな船出となりました。

しかし、すぐに襲い掛かってきたのは新型コロナウイルス。2期目の活動は高校生向けのオンラインイベントが主となりました。そんな中でも北星学園大学附属高校との交流などを行い、3期目では、マイプロジェクトの北海道サミットへの参加、感染対策をしながらAERUでのフォトツアーを開催。4期目では継続的な活動となるごみ拾いのプロジェクトを開始。5期目では、町の飲食店の魅力発信プロジェクトや小学生対象の運動と学習の混ぜ合わせイベントの開催などを行ってきました。

現在、うらふる隊は6期目を迎え、2023年12月には初のアートイベントを開催。この5年間で、本当に様々な分野でのプロジェクトを形にしてきました。どの活動も一貫しているのは、高校生たちの「ワクワクすることへの挑戦」であり、「故郷への温かな想い」です。齢16、17歳の高校生たちが自分の故郷を大切に思い行動できる。こんな素敵な高校生たちが育つ日高。まだまだ、捨てたもんじゃない。

しかし、そんな彼らは知っています、自分たちのチカラはちっぽけで、限界があるということを。だからこそ、彼らのまだ見ぬプロジェクトには、これを読む、まだ見ぬ”あなた”のチカラが必要です。

まだまだ発展途上のこの団体。入れ替わりのサイクルがはやい高校生の団体はいつだって初心であり、いつだってフレッシュです。未熟が故に美しい彼らが描く故郷の未来を一緒にワクワクしてみましょう。

はじめまして、私たちが「浦高生ふるさと応援隊」です。

浦高生ふるさと応援隊 名誉隊長/宇都宮大学共同教育学部教育心理分野4年

大空 優太

高校生たちの世界

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Mail:urahurutai@gmail.com
<浦高生ふるさと応援隊各SNSアカウント>
Facebookページ:https://www.facebook.com/Urakouproject
X(旧 Twitter) : https://twitter.com/Urakouproject
Instagram:https://www.instagram.com/urakoufurusato?igsh=cmczcHJ4ZGM5Ynli



2019年12月、浦河町にて立ち上がった高校生だけの学生団体。
町を取り巻く様々な出来事と高校生の「やりたい」を交ぜ合わせ、町のさらなる活性化を目指す。現在は第6期目。



大空優太
2001年生まれ。浦河町出身。浦河高校卒業後、宇都宮大学共同教育学部教育心理分野に進学。
高校生時代、初代隊長として浦高生ふるさと応援隊を立ち上げた。現在は団体責任者として高校生の伴走支援を行う。