ぶらカフェ
#1「椿サロン」
Hi-MAGも気がつけば一周年。せっかくだから俺も気軽にやれる連載がしたくなったので、日高の良い感じのカフェを巡って、気ままに紹介しようと思う。これを機に、まだ行ったことのないお店にも足を伸ばして、フラッと寄れるカフェが増えたらいいなと。
で、一軒目はここ『椿サロン 夕焼け店』。
日高道の終点、厚賀インターを降りて浦河、襟裳方面へ向かう国道235号を少し走ると、一本だけ立った風車の袂、地元の人たちにも美しいサンセットでお馴染みの大狩部(おおかりべ)の海沿いの小高い丘の上に佇む一軒家がある。それがここ。「夕焼け店」ってくらいだからここはあくまで支店で、本店は札幌にあって、調べたら渋谷にも銀座にも、さらには台北(台湾の)にも進出してる、ぜんぜんメジャーなカフェだった。
日高に通い出してほぼ3年。けっこう初期の頃に地元(日高)の友達に「いいカフェがある」と連れてこられて、その時にまず感じたのが「あ、通える」というそこはかとない喜びだった。人それぞれカフェに求めることは違うとは思うが、俺の場合はよくカフェで創作(主に詩作)とその息抜きをすることが多いため、「ぼーっとできる」かどうかがけっこう重要で(特に一人で来るならば)このお店はまさにぼーっとしたい人の天国。ほんとに天国っぽいロケーションだし。
で、このお店の一番の特徴は「客席に照明がない」ということで、自然光マニアの俺としてはたまらなく嬉しい。なので営業時間が日没までという、営業形態としてはやや挑戦的な姿勢にも関わらず、土日なんかは遠方からのお客さんも多く、外のテラスで少し待たされることもしばしば。テラスによくいる猫もかわいい。ところで猫の幸せってなんだろう。
10坪の一軒家を改築したという店内は、1階には4人掛けのテーブル席がいくつかあって、ロフトっぽい作りの2階には海に臨むカウンターに椅子がゆったりと並べられていて、どの席からでもこれでもかとばかりに海が見られる。日高の海って、海流の影響なのか一年を通して全体的に淡く、水平線と空の境界が絶妙なグラデーションになっていて「この世界ってなんなんだろう」的な哲学的な気持ちにさせられる。詰まるところ、心の深いところから聞こえるシンプルな気持ちに立ち帰れる。気がする。
もちろんメニューも充実していて、「椿さんど」を筆頭とした季節のスイーツなどは絶品。なんていうか、本当に「本当の贅沢」な気持ちにさせられる。と同時に「贅沢ってなんだろう」って、これまた哲学的な境地に追いやられる。さっき、ぼーっとするって言ったけど、逆にめちゃくちゃ思考してるのかも。あ、ちなみにぼーっとしてる時の方が脳みそが働いてるって何かで読んだんだけど、個人的にその状態が理想。いつも目指してる所。
そんな禅寺的な趣(そんなこと言ってんの俺だけだと思うけど)にも拘らず、ここで働く店員さんたちは優しくて朗らかで、その柔らかさはここで食べるパンケーキのしっとりなのかふんわりなのか分からなくなる感じそのもの。壁にかけられたMacintoshのスピーカーから流れる緩やかなBGMが会話を邪魔しない程度に充満していて、居心地の良さで考えたら、日本中探してもなかなかないんじゃないかなってくらい。。。
って、なんか初回にして褒め過ぎかしら。けど、行ったことのある人なら「わかるー」って頷いてくれるはずだし、まだ行ったことのない人は、ぜひ一度フラッと立ち寄ってみたら納得してくれるだろう。あ、いわゆる「映えスポット」であることは間違いないんだけど、写真に撮ると記憶が薄まる感じがするのはなんでなんだろう。思い出せることと、記憶として体感になることって似てるけど全然違う。
書いてたら「椿さんど」食べたくなってきた。