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ぶらカフェ
#2「農暮舎」

慎ましく始まった日高のカフェ巡り「ぶらカフェ」。#2となる今回選んだのは、この春(2024年)新冠町 明和の山中にオープンした「農暮舎」(のうぼしゃ)。

当初は土日しかやってなくて、最近になって月曜日も開けるようになったみたい。店までのアクセスは何通りかあって、言葉で説明するのがちょっと難しい(だって周りは牧場ばかり!)。「Googleマップで向かってください」って言うのが一番正確なんだけど、ざっくり言うと、海沿いの国道から内陸へ向かういくつかのルートで行ける。個人的にはサラブレッドロードをひた走り、新冠川を越える道が一番気持ちいいかと思う。ハナレグミとか聴きながら。

ちなみにこのカフェはハイマグの宿舎から息を止めて歩いても着けるくらいのご近所さんで、とある午前中に散歩をしていて辿り着いたのが出会い(最初行った時は完成間近だった)。コンビニに行くにも車で15分はみないといけない環境で、目と鼻の先にこんないいカフェが突如できたんだから、生まれ変わる前にどれだけの功徳を積んだんだろうと、考えたこともない自分の過去生が急に誇らしくなった。

茶色いバインダーに留められたメニューを一枚捲ると、「農暮舎ストーリー」と題された小文があり、それを読めばこのカフェの尊さが分かる。もともと養鶏業をしていたという店主の櫻井さんが、3年の歳月をかけて全て手作りで建てたという、こだわりのカフェ。

敷地内にある鶏小屋では数十羽の鶏が飼育されていて、採れたての卵がメニューにもふんだんに使用されている。専門家ではないので卵の味わいまで語ることはできないけれど、そこにいる鶏たちが産んでくれた卵を目の前で食べるという行為は、ありがたさに満ちていて一口毎にしみじみしちゃう。

それと、看板娘のヤギのユキちゃんが来るお客さんを横目で見ていて、初めは近づくのがちょっと怖かったけど、何度か通っているうちにどんどん愛らしくなってもう撫でたりしても大丈夫。それこそ、日高に来出した頃は馬も近づくのが怖かったな。図鑑とか映像で知ってるメジャーな動物も、実際に触れられる距離まで近づくと感じ方が全く違う。たまに行く子供たちはいつも放し飼いの鶏と追いかけっこして遊んだり、たまに転んで泣いたり。自然に「自然」と戯れている。感謝。

今回は取材を意識して、同伴した友達とスパイスチキンカレーと長岡式酵素玄米ごはんセットを頼んでシェアしたところ、どちらも優しく滋味に富んでいた。これまで何度か背伸びして使った「滋味に富む」って表現が、こんなにしっくりきたことはない。いつも来るときは寝起きのまま、淹れたてのコーヒーを飲み、季節ごとに移りゆく窓の景色を眺めながら思考の整理をしたり。

グルテンフリーの「スパイスチキンカレー」 

化学調味料不使用の「長岡式酵素玄米ごはんセット」(5セット限定)

こだわりの「自家焙煎コーヒー」

グルテンフリーの「米粉もちもちワッフル」(アイスも手作り)と「自家製ハスカップソーダ」(農暮舎産ハスカップ)

バイクが好きでツーリングが趣味という店主の櫻井さん。お店に隣接しているタイニーハウスも自力で作ったらしく、いつも朗らかで温厚そうなその雰囲気とは裏腹に、めちゃくちゃ気合と根性の人なんだと俺は踏んでいる。

優しさと剛さ。農暮舎の礎はきっとそこにある。

農暮舎(のうぼしゃ)